黒部横断 黒部の底
黒部横断連載?3回目です。
長文です。
しかも記事を2回に分けます。最初の記事は文章中心。次の記事は写真中心です。
2月25日
朝は曇っていたが、だんだんよくなる予報。
木の間から対岸にある黒部別山の姿も見ることができた。
快適な雪庇下のテントを撤収して出発。ここから先は懸垂で下りるしかなさそうだ。
地図だけではどのように下っていいやらさっぱり分からない。
有視界で現場判断。でもなかなかうまくいかないものだ。
「だいたいこのあたりかな?」
だれも確信的な判断はできない。オンサイトで下降する難しさ。荷物が重いだけに、失敗は許されない。
だんだん傾斜がきつくなってきた。
足元はすっぱり切れ落ちている。
どうやら岩壁の上に出てしまったらしい。
ここまで懸垂で2ピッチ下りてきてしまった。もうここを下りるしかない。
狭い場所からの懸垂。僕が下りて様子を見ることに。
バックアップをとって、慎重に下降。
さあここから、というところでもう一度ロープを手繰って下に落とす。
ロープはむなしく宙を舞っている。
どうも1ピッチでは足りないようだ。
仕方なく、5mほど根性で登り返して、そこにあった立ち木に支点をとって再度懸垂。
ロープはギリギリ下に届いていないが、フォールラインから5mくらい右側にブッシュが見える。
そこまでは届くと判断した。
下降開始。
下りはじめてしばらくして、身体が壁から離れた。
見た目以上に傾斜がある。
下りる前にもっとちゃんと考えておくんだった!
当然重荷に引かれて、ひっくり返りそうな体勢になる。ザックのバックアップが必要だった。うかつだった。初歩的なミス。
もうどうしようもない。
とにかくどんどん下る。
筋力には自身があるけど(笑)さすがに腹筋も限界に近い。身体も回転し始めた。
ザックの紐のせいで朦朧としてくる。
このままではヤバイ。。。
ザックを捨てるか?でも下は川が流れている!何とかするしかない。
それからは一瞬だった。腕っ節には自信あり。
30キロオーバーのザックを空中で外して、身体の前に持ってきて、
あらかじめつけておいたザックのセルフをとりあえずハーネスのランヤードに固定。これで開放された。
上で待っている2人は、最初その様子を笑いながら見てたらしい!
でも空中でくるくる回り始めてからヤバイと思ったらしく、さらにザックをおろした瞬間はまさかとも思ったとさ。。。でも動作があっという間だったと。
思い出に残る懸垂下降は続く。
ブッシュまでの水平移動が最悪。
進行方向が反重力に変わったとたん、荷物が動作を封じ込める。
必死に岩をつかみ、身体を左に動かし、ヒールフックやジャミングをきかせつつ片腕はレスト。
その繰り返しでじりじり進み、何とかアンカーとなり得る木の幹をつかむことに成功。
地獄のような時間がようやく終わった。
「バックアップちゃんととってくださいよ~!」
言うまでもなく、僕の様子を見てちゃんと準備をする上の2人。
2人目が下降。
バックアップ長すぎ!
自分もこれよりひどい体勢だったと思うと、つくづく判断が甘かったと反省せざるを得ない。
3人目が下降して、さらに1ピッチ下降して黒部の底に降り立つ。
長い下降がようやく終わった。
下降した場所から上流側(横断した部分)
下流側(正面は壁尾根)
黒部の底からの眺めは素晴らしい。
ここにいるだけで感動する。
圧倒的な迫力に、自分の存在のちっぽけさ、そして何か、本当にここにいていいのか。。。
そんな気にさせられる。
この日は大タテガビン第二尾根の1300m地点まで上がって幕営。
続いて次のエントリーはこの日の写真ばかりを集めてアップします。