黒部横断 黒部の写真

続いて写真中心に。
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大タテガビン第一尾根(左)と第二尾根
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下降した岩壁
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第二尾根取り付き付近のラッセル(背景は第一尾根)
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同じく第二尾根取り付き付近
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雪に埋まる黒部峡谷
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下降した尾根の末端
左側が新越沢
もう少し右にラインをとるべきだった。しかし、次回はもっとうまく下降できそうだ。
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右奥が鳴沢岳。延々と尾根を下降。
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第二尾根1300m地点。早めに切り上げしばし休養。
次回は第二尾根~黒部別山南峰まで行けるかな?
なんせ4日かかってますから。。。
では次回もお楽しみに!
明日は南八ヶ岳テント泊で楽しんできます。


黒部横断 黒部の底

黒部横断連載?3回目です。
長文です。
しかも記事を2回に分けます。最初の記事は文章中心。次の記事は写真中心です。
2月25日
朝は曇っていたが、だんだんよくなる予報。
木の間から対岸にある黒部別山の姿も見ることができた。
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快適な雪庇下のテントを撤収して出発。ここから先は懸垂で下りるしかなさそうだ。
地図だけではどのように下っていいやらさっぱり分からない。
有視界で現場判断。でもなかなかうまくいかないものだ。
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「だいたいこのあたりかな?」
だれも確信的な判断はできない。オンサイトで下降する難しさ。荷物が重いだけに、失敗は許されない。
だんだん傾斜がきつくなってきた。
足元はすっぱり切れ落ちている。
どうやら岩壁の上に出てしまったらしい。
ここまで懸垂で2ピッチ下りてきてしまった。もうここを下りるしかない。
狭い場所からの懸垂。僕が下りて様子を見ることに。
バックアップをとって、慎重に下降。
さあここから、というところでもう一度ロープを手繰って下に落とす。
ロープはむなしく宙を舞っている。
どうも1ピッチでは足りないようだ。
仕方なく、5mほど根性で登り返して、そこにあった立ち木に支点をとって再度懸垂。
ロープはギリギリ下に届いていないが、フォールラインから5mくらい右側にブッシュが見える。
そこまでは届くと判断した。
下降開始。
下りはじめてしばらくして、身体が壁から離れた。
見た目以上に傾斜がある。
下りる前にもっとちゃんと考えておくんだった!
当然重荷に引かれて、ひっくり返りそうな体勢になる。ザックのバックアップが必要だった。うかつだった。初歩的なミス。
もうどうしようもない。
とにかくどんどん下る。
筋力には自身があるけど(笑)さすがに腹筋も限界に近い。身体も回転し始めた。
ザックの紐のせいで朦朧としてくる。
このままではヤバイ。。。
ザックを捨てるか?でも下は川が流れている!何とかするしかない。
それからは一瞬だった。腕っ節には自信あり。
30キロオーバーのザックを空中で外して、身体の前に持ってきて、
あらかじめつけておいたザックのセルフをとりあえずハーネスのランヤードに固定。これで開放された。
上で待っている2人は、最初その様子を笑いながら見てたらしい!
でも空中でくるくる回り始めてからヤバイと思ったらしく、さらにザックをおろした瞬間はまさかとも思ったとさ。。。でも動作があっという間だったと。
思い出に残る懸垂下降は続く。
ブッシュまでの水平移動が最悪。
進行方向が反重力に変わったとたん、荷物が動作を封じ込める。
必死に岩をつかみ、身体を左に動かし、ヒールフックやジャミングをきかせつつ片腕はレスト。
その繰り返しでじりじり進み、何とかアンカーとなり得る木の幹をつかむことに成功。
地獄のような時間がようやく終わった。
「バックアップちゃんととってくださいよ~!」
言うまでもなく、僕の様子を見てちゃんと準備をする上の2人。
2人目が下降。
バックアップ長すぎ!
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自分もこれよりひどい体勢だったと思うと、つくづく判断が甘かったと反省せざるを得ない。
3人目が下降して、さらに1ピッチ下降して黒部の底に降り立つ。
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長い下降がようやく終わった。
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下降した場所から上流側(横断した部分)
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下流側(正面は壁尾根)
黒部の底からの眺めは素晴らしい。
ここにいるだけで感動する。
圧倒的な迫力に、自分の存在のちっぽけさ、そして何か、本当にここにいていいのか。。。
そんな気にさせられる。
この日は大タテガビン第二尾根の1300m地点まで上がって幕営。
続いて次のエントリーはこの日の写真ばかりを集めてアップします。


黒部横断 黒部を目指して

2月22日は入山初日にふさわしい天気で、順調に進んだ。
翌23日からは天候は下り坂の予報。
朝早くにテントを撤収して鳴沢岳を目指す。
稜線はもなか状の雪で、ズボズボ埋まって歩きにくい。
だんだん天候が悪くなる中、鳴沢岳に到着。黒部に向かう下降路はすぐに見つかるが、吹き上げてくる風と雪で視界が奪われる。
一時間ほど我慢して進むと樹林帯。
やっと一息つくことができた。
しかし、後で知った話だけどこの日は春一番だったそうだ。
雪はどんどん降りしきり、あっという間に積もっていく。
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僕らが今回下降した尾根は、鳴沢岳から北北西方向に伸びている尾根だった。
過去に下降した記録は、ちゃんと調べてないのでよく分からないけど、新越沢の出合に出る尾根だ。
この尾根は大タテガビン第一尾根に取り付くには最短。
標高1600mあたりから黒部に向けて急降下しているが、そこから先のルート取りがポイントになりそうだ。
視界があったおかげで、ところどころポイントとなる分岐は見逃さずに通過。
1600m付近からところどころロープを出して1250m付近まで下降。
ウエアはこの頃すでに氷の鎧。
とっても湿った雪で、全てを凍りつかせる勢いで降っている。
さすがに雪がひどくなってきたので、テン場を探すことにした。
これ以上下降すると、もう黒部に下り切るしかない。
しかし、それにしてもひどい雪だった。
あっという間に20センチくらい積もってしまう雪。
普通にテントを張ったら、あっという間に埋没してしまう可能性があった。
しばらくテン場を探していたら、ちょうどおあつらえ向きの場所を発見。
巨大なキノコ雪の庇の下に、ぽっかりと空いたスペースがあった。
かなり大きな庇で丈夫そうだったので、その下を少し拡張。
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これで何とか安心して眠れそうな場所は確保できた。
その日の天気予報では、大雪に警戒するよう呼びかけていた。
北陸地方の山沿いでは一晩で80センチの積雪の予報。
まあでも、落ちつける場所は確保できたわけだから、じっくり粘りますかね。
2月24日は結局停滞。
富山県の入善町では高潮の被害もあった模様。日本中大荒れの一日だった。
僕らは動くことができず、一日中トランプですごした。
2年前のインドの日々を思い出す。あの時も、暇さえあれば4人でトランプしてたっけ。
それにしても、停滞って何にもしてないのに腹が減る。
夕方ごろから小降りになり始めたけど、累積の積雪は1m以上。
この夜、目標の大タテガビン第一尾根はあきらめることにした。
取り付きまでかなり長い時間ルンゼを登らなければならず、今の雪の状態ではとても突っ込めるはずもない。常識的な判断だった。
山のご機嫌を伺いながら、と思っていたけど、これだけ圧倒的に降られてしまうとどうしようもない。
明日はいよいよ黒部の底。
どんな世界が待っているのだろうか。


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